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ブローバイガスとは?成分から対策について!PCVバルブ(還元装置)で大丈夫?
ブローバイガスとは何かご存知ですか?ブローバイガスとは燃焼室から漏れたガスのことで、大気に排出されると大気汚染の原因になります。現在はPCVバルブという還元装置を使ってブローバイガスを大気に放出しないようなシステムになっています。今回はブローバイガスの成分・対策について、PCVバルブ(還元装置)で大丈夫なのか、を説明していきます。
この記事の目次
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ブローバイガスとは?
どのような成分なのか
ブローバイガスとは、エンジンの圧縮・燃焼工程において、ピストンとシリンダーの隙間からクランクケースに洩れてしまう混合気や燃焼ガスのことをいいます。
その大半が圧縮工程から漏れた未燃焼ガスです。
燃焼していない状態のガス、ということですからガソリンそのものを指すことになります。
ガソリンには大気汚染の原因となる炭化水素(HC)が含まれているので、そのまま大気に放出してしまうと光化学スモッグ現象が起き、人体にも悪影響を及ぼします。
日本では、1970年に都内の中高学校で生徒数十人が、グランドで体育の授業中に目や喉の痛みを訴えた事件が光化学スモッグ現象問題として有名です。
ブローバイガスはエンジンオイルへも影響する?
ブローバイガスは、クランクケースのオイル(エンジンオイル)に混ざってしまうことで、オイル汚れが発生してしまいます。
オイルが汚れるとオイル粘度が低下し、潤滑剤としてのオイルの働きが悪くなってしまいます。
その結果、エンジン内の機械同士に摩擦が起こり、不具合を招く恐れがあるのです。
特に直噴エンジンにおいては、PMという小さな粒子状の物質が含まれているので、オイルに混ざるとザラつき、機械に傷をつけてしまう可能性もあります。
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ブローバイガス放出による環境問題と人体への影響
ブローバイガスをそのまま放出し続けていると、光化学スモッグのような環境問題を引き起こします。
光化学スモッグ現象とは、昼間でも薄暗くなってしまうような煙っぽい空気の状態です。
ブローバイガスの主成分、炭化水素は紫外線にさらされることにより化学反応を起こし、変質し、オゾンなどが生成されます。
これが光化学スモッグ現象のメカニズムです。
では、光化学スモッグ現象が起こると、人体には具体的にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
光化学スモッグによる人体や環境への影響
人体への影響としては、目や喉の痛み、皮膚の発疹など様々な不調を起こします。
重症のケースでは、呼吸困難や意識障害になる危険性もあります。
人体だけでなく、植物にも影響することが報告されています。
1940年代のアメリカでは、光化学スモッグにより農作物への被害が多発しました。
それほど光化学スモッグというものは危険なものなのです。
大気汚染やそれに伴う人体への悪影響を防いでいるのが、「PCVバルブ」という装置なのです。
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PCVバルブ(還元装置)とは?
ブローバイガスを排出することは、前述の通り大気汚染やそれに伴い人体への悪影響を引き起こしてしまうため、現在の法律ではブローバイガスを直接排出することを禁止しています。
しかし、エンジンの構造上、ブローバイガスがクランクケースに漏れてしまうことは仕方ありません。
そこで、ブローバイガスを抑制する装置、PCVバルブ(還元装置)というものが作られ、必ず装備することが義務付けられました。
PCV装置は、「Positive Crankcase Ventilation System」の頭文字をとって名づけられました。
PCVバルブの働きとは?
PCVは、クランクケースに溜まったブローバイガスをインテークマニホールドの負圧を利用して吸収し、再びエンジンの燃焼室へ戻すという働きをしています。
この働きにより、ブローバイガスを大気中に放出することを防いでいるのです。
このバルブは逆流しないのか?という心配する方もいるかもしれませんが、ワンウェイバルブ(一方通行)という作りになっているので逆流する恐れはありません。
現在の主流は「クローズドタイプのPCV装置」
アメリカでは日本よりも車文化の歴史が長く、大気汚染問題についても日本より前から研究されてきました。
1961年には、カリフォルニア州ではすべての車にPCVバルブが装備され、翌年にはアメリカ50州ですべての車にPCVバルブが導入されました。
それから開発は進み、より効率の良い、確実に大気放出させないPCVバルブが作りだされ、現在は「クローズドタイプ」と呼ばれるPCVバルブが主流となっています。
この装置は、アイドリングやエンジンブレーキがかかっているような低負荷時(スロットルバルブの開度が小さい)において、効率良くクランクケースからブローバイガスを循環させることができ、新鮮な空気を導入する仕様になっています。
PCVバルブ(還元装置)はメンテナンスが必要
年式の古い車、長期間使用した車、そして無理な走行を続けている車のPCVバルブはひどい汚れが付着している可能性が高いです。
PCVバルブが汚れるとバルブの動きが鈍くなり、クランクケース内にブローバイガスが溜まり続けて内圧が上昇します。
この内圧上昇に伴い、シール類が破損しオイル漏れを引き起こす恐れがあります。
それだけでなく、PCVバルブが正常に作動しないことにより、ブローバイガスが他の逃げ道を探し、エアクリーナーや吸気系に流れ着き、他の部品を破損する原因にもなってしまいます。
車種によっては、容易にPCVバルブにアクセスでき自分で点検できる場合もありますが、大抵の場合はPCVバルブを自分で点検して洗浄したり交換することは困難なので、専門店で点検することをおすすめします。
PCVバルブを定期点検しクリーンな空気を守ろう!
ブローバイガスの成分や対策、PCVバルブとは何なのか、を紹介してきましたがいかがでしたか?
クリーンな大気と私たちの健康を守るために、PCVバルブが活躍してくれていることが分かりましたね。
「PCVバルブ」は、認知度が低くあまり聞き慣れない部品ですが、大気汚染を防ぎ私たちの健康を守る大切な役割を果たします。
目立つ存在ではないPCVバルブ。クリーンな空気を保つために必要なこの部品を、定期的に点検し、クリーンな世の中にしましょう!
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